最初にお伝えしておきたいのは、ブラック企業というのは労働環境と意識が、経営者と従業員間で乖離している状態とここでは定義しています。
労働時間が法外に長くても、その環境を従業員が望んで事業目的に向かって意識の面でも進んでいる場合はブラック企業とは言いません。
つまりブラック企業かどうかは、環境と意識の2つの要素が決定する問題であることがわかります。
私も、朝から深夜まで働いて24時間いつでも仕事の連絡が来て、即対応をしないといけないような環境でしたが、当初はモチベーション高くやっていました。
しかし、ある時期を堺に、経営者との心理的な乖離が起きて、その環境での成功に見切りをつけた段階でブラック企業となったのでした。
なぜブラック企業のサラリーマンはとんでもなく給料が低いのか
ひとくちにいっても会社ごとに状況はさまざまなので、一概には言えません。
しかし、いろんな人の話や、自分自身のブラック企業での経験から考えて、一定の答えにたどり着いたのでご紹介させていただきます。
私がブラック企業に入社したのは31歳です。
その当時のブラック企業での年収が240万円です。そこに転職する前は年収650万円。
結婚してました。
その翌年には子供も生まれました。
住んでる場所は、都心部です。。。
生きていくのがやっとの年収で、貯金は年々目減りして底をつく。
そんな環境です。
- ブラック環境で外に出られず人脈が広がらない
- 自分はこれくらいの相場の人間なんだと認めてしまう
- 作業仕事に忙殺されて技術資産が蓄積できない
- 利益の分配が不透明なまま
詳しく見ていきましょう。
なぜ長時間働いているのに、そんだけしか稼げないの?
めちゃくちゃ働いてるなら、それなりの年収があるのでは?
周囲からはそう思われるでしょう。
しかし、実態は全く異なるケースがあります。
もちろん全てのケースに当てはまるわけではありませんが、一般的に労働時間と収入を4パターンで分けることができます。
- 給料が高くて、労働時間が一定時間内の仕事
- 給料が高くて、労働時間も長い仕事
- 給料が低くて労働時間も短い仕事
- 給料が低くて労働時間が長い仕事
最後の4番目の給料が低くて労働時間が長い仕事について、この記事では見ていきます。
ブラック環境で外に出られず人脈が広がらない
ブラック企業というのは厳しい労働環境でも頑張って働けてしまうほど、精神的にも肉体的にもある程度タフな人が続けています。
その環境がもたない人は数ヶ月で辞めます。
そんな中でとにかく労働力を安く買い叩かれた状態で、限界まで仕事を振られます。
限界まで仕事を振られるので能動的に人脈を広げたり、自分で打ち手を打っていくという未来への投資が困難な状態が続いていきます。
そのため、ブラック企業で勤めている期間で新たに人脈を作っていくことができません。
その結果、本当は良い働きぶりをする人であっても、人脈を広げてよりよいオファーを得られる機会を損失してしまいます。
自分はこれくらいの相場の人間なんだと認めてしまう
給料の低いブラック企業で頑張って仕事を続けていると、時給換算すれば都道府県で指定されているような最低賃金以下になってしまうことがあります。
私も大きく最低賃金以下の給料で働いていました。
環境はブラックであっても、仕事である以上高い集中力の維持が当然求められます。
仮に寝不足でミスが起こりやすい状態であっても、ミス自体はミスを犯した本人の責任になります。
そうしたミスの追求なんかもあいまって、上司や社長に厳しく叱責され続ける日々が経過するとします。
そうなると、「自分はこの程度の能力なのでこれくらいの給料しかもらえなくて当然なんだ」と思うようになります。
むしろ、こんな能力の低い自分を雇ってくれてありがとうございますと口にするような人間もいました。
この、年収が異様に低くても当然であるという思考が定着すると、その給料が自分の給料なんだと認識して固定化されてきます。
しかし、本当にそう考えるのが妥当でしょうか。
会社の従業員の給料は経営者が決めています。
つまり、その給料は「経営者の言い値」ではないでしょうか。
仮に正社員ではなく、業務委託という形で、業務内容毎に市場相場で仕事を受けた場合、収入は大きく増えませんか?
一見、給料というのは自分の実力が勘案されて市場性が働いていると考えられがちです。
確かにそういった会社もあります。
しかし、ブラック企業では往々にして業務内容ではなく経営者の言い値で格安な給料で働かされているケースを何度も見ましたし、私自身もそうでした。
そんなに辛くて給料が低い仕事なら、なんで辞めないの?と疑問に思う人もいるでしょう。
その答えこそがブラック環境で「自分はこれくらいの相場の人間なんだと認めてしまう」ことで「ここで成果を出すしか無い」と考えてしまうからです。
また、そもそも忙しすぎるので第三者の意見を聞けるような状態にはなりません。
企業がブラックになっていく理由というのは様々あると思いますが一定の法則があります。
私が経験した中では主に3つの特徴があります。
- 経営者のマインドがそもそもネイティブでブラック
- 市場が数年でレッドオーシャンになり、事業展開に乗り遅れた
- 利益を新規顧客獲得などの投資に回さず使い切っていた
現在はブラック企業でも過去には会社の財務面も優れていて、成長している会社だったというケースもあります。
その、過去の成功体験が強烈に経営者の頭の中にあり、成功するにはブラックな環境以外に無いと考えているパターンがあります。
そのため、自分自身もハードワークをしながら従業員にもハードワークを強いるのです。
創業者の叩き上げで、事業が伸びている間はブラック環境でも過ごせていたのが、期間が経過する毎に参入する競合が増えて、事業やサービスそのものがコモディティ化し競争力を失ってしまったケースもあります。
競争力が無い場合は、業務効率化によってリソースを再度分配して利益率を確保していくことになりますが、そのような効率化を推進できるような技術力が無い場合「運用でカバー」と謳って人海戦術で既存事業をフォローしだすことでブラック企業の出来上がりです。
それは市場のコモディティ化の流れに対応できていなかったのと、利益を他のコトに使ってしまっていたから優秀な人材も確保できず仕組み化に乗り遅れたということですね。
作業仕事に忙殺されて技術資産が蓄積できない
先程の話と連動しますが、利益を他のことに使ってしまっていた場合。
私が勤めていたブラック企業では社長は会社の金で数千万円の高級外車を買ってました。。。
会社で生んだ利益を更なる投資に回せずに優秀な人材も確保できず、既存業務の仕組みができないとなると、その時点で働いている従業員は作業仕事に追われることになります。
作業仕事に追われて少ないリソースで業務を運営する中でのミスなども起きてきます。
そんな環境では従業員は自分のキャリアアップのための技術資産を高めることができません。
例えばエンジニアであれば新たなプログラミング言語の習得や、アナリストであれば新たな分析ノウハウの学習、営業であれば新規開拓、デザイナーであればポートフォリオなどです。
結果として「超絶忙しく働いている割に、成長しない」という負のスパイラルに陥ります。
そのため、市場で評価されるような技術資産が蓄積できず、市場ではより優秀な技術資産を持った人間に価値がつきます。
なぜなら、ブラック企業で業務内容自体は誰でも出来ることしかしてないから、できないからです。
利益の分配が不透明なまま
そこまでブラックな環境になってしまうと、ブラック企業経営者は「相場よりも低い給料で社員を働かせる」という方向にシフトします。
ベンチャー企業で従業員の人数が限られている場合は、会社の売上がわかればどれくらい利益が出ていて、経営者はどれくらいの収入なのか?がなんとなく想像できてしまいます。
従業員の給料が低いわりに経営者の収入が多いとなると、ストライキを起こされる可能性が上がるので「利益の分配が不透明な状態」で切り抜けようと動きます。
こうなると不透明なまま期間が過ぎ、従業員はブラックな環境のまま自分で打ち手を出せないまま、もっとも重要な時間というリソースを消費して月日が流れます。。。
まとめ
ブラック企業といってもそのパターンや内情は企業ごとにさまざまです。
今回は私が経験していたブラック企業での負のスパイラルについて解説してきました。
繰り返しになりますが、たとえ一般的にはブラックな環境であっても経営者と従業員の間で意識の乖離が無く、一緒に事業の目的に向かって進んでいる場合はブラック企業ではありません。
むしろ目的を達成するための少数精鋭の最適化された集団だという場合もあります。
しかし、ある時点を堺にブラック企業に転じて、働いていても得をしないただのブラック企業になってしまう場合もあります。
ブラック企業で長く勤めていると、視野が偏ったりかなり狭まったりしてしまうこともあります。
この企業が、ブラック環境で疲弊してしまっている人の役に立てれば嬉しいです。